監督:アレクサンダー・ナナウ
出演:カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ブラド・ボイクレスク、ナルチス・ホジャ
原題:Colectiv
制作:ルーマニア、ルクセンブルク、ドイツ/2019
URL:https://transformer.co.jp/m/colectiv/
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

2015年10月30日、ルーマニアの首都ブカレストにあるナイトクラブ「コレクティブ」で火災が発生。ひとつしかない出口に場内にいた人びとが殺到して、逃げ遅れた27人が死亡。さらに、その後の数ヶ月間で適切な治療を受けられなかった負傷者37人が亡くなる事態が発生した。

このドキュメンタリーのテーマは、「コレクティブ」の火災原因の探求がメインではないかと勝手に想像していた。ところがその火災は、この映画の語るべきテーマのきっかけに過ぎず、次第に社会主義国時代から引き継いでしまった製薬会社と病院経営者、政府関係者の巨大な癒着が、スポーツ紙の記者(と云うところがスゴイ!)によって明らかにされて行く過程が描かれていて、さらに腐敗にまみれた国のシステムを変革しようと奮闘する新しい大臣へ次第にカメラの焦点が当てられて行く。

このドキュメンタリー映画の驚くべきところは、現職大臣の執務室にまでカメラを入れているところだった。アレクサンダー・ナナウ監督が政府とどのような交渉をしたのかわからないのだけれども、そこまでオープンにしようとする姿勢が国としてあるのならば、すでに問題は解決の方向に進んでいるとも感じられるシーンだった。社会主義国であった時代の暗いイメージがあるからこそ、そこから反動するパワーが強いのかもしれない。透明性や可視化が大事と云いながらも黒塗りの文章しか出せない国よりは数倍マシに見えてしまった。

→アレクサンダー・ナナウ→カタリン・トロンタン→ルーマニア、ルクセンブルク、ドイツ/2019→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★★