監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、エウヘニオ・デルベス、トロイ・コッツァー、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ダニエル・デュラント、マーリー・マトリン
原題:CODA
制作:アメリカ、フランス、カナダ/2021
URL:https://gaga.ne.jp/coda/
場所:109シネマズ木場
今年のアカデミー作品賞は、シアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』が受賞した。通常ならそれで盛り上がるところなんだけれども、今回ばかりはウィル・スミスによるクリス・ロックへのビンタ騒動にすべてを持っていかれてしまった。そのために作品賞がだいぶ霞んでしまった。
だから、ちょっとかわいそうなので、そしてまだ未見だったので『コーダ あいのうた』を観に行った。
最近つくづく感じることだけれど、日本ではアカデミー賞の話題だけでは動員が伸びなくなってきていて、アカデミー賞発表後の土曜の昼間でも客席は半分ぐらいしか埋まっていなかった。作品的にもちょっと地味な感じの小品で、それよりも『SING/シング:ネクストステージ』のほうがお客が来ている雰囲気だった。
映画を観終わったあとに帰りがけの中年夫婦が「いい映画だったね」と云っていたように、『コーダ あいのうた』は映画として不足な部分は何もなかった。でも、聴覚障害のある両親に育てられた健常者の子供が、親の手話の通訳者でしかない自分の存在に疑問を持ち始める成長ストーリーでしかなくて、昨今のノーマライゼーションの考え方に合致する内容ではあるものの、これが作品賞? とおもわざるを得ないコンパクトな映画だった。だから、よし、映画館で観よう! と行動を起こさせるにはちょっと弱い映画ったのかもしれない。
そう云えば、アカデミー賞の授賞式中継の最中に町山智浩がTwitterでジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の作品賞が有力だけれど「誰からも愛される映画『コーダ』が逆転する可能性が高いです。」と云っていた。
これは、アカデミー賞の投票方法が、ちょっと特殊なことから推測するTweetだった。アカデミー賞の作品賞を選ぶ方法は、アカデミー会員が10本のノミネート作品全部にそれぞれ順位を付けて、たとえば1位のものは10点、10位のものは1点とするような集計方法になっていて、だから1位が少なくても、みんなが2位、3位に入れるような映画が上位になってしまう仕組みだった。だから、平均点を取るような映画が点数を集めて、作品賞を獲ってしまう流れになっているらしい。
無難な映画が作品賞を獲るよりも『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のような尖った映画が獲ったほうが、映画館で観たい! と行動を起こさせるのだろうか。いや、それもまた違うかのなあ。もうすでに日本のシネコンは、アニメ作品を観る場所として固定されてしまったのかもしれない。それも悲しいなあ。
→シアン・ヘダー→エミリア・ジョーンズ→アメリカ、フランス、カナダ/2021→109シネマズ木場→★★★☆