監督:マイク・ミルズ
出演:ホアキン・フェニックス、ギャビー・ホフマン、ウディ・ノーマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト、スクート・マクネイリー
原題:C’mon C’mon
制作:アメリカ/2021
URL:https://happinet-phantom.com/cmoncmon/
場所:TOHOシネマズ日比谷

最近、文京区の小学6年生のプログラミング授業にサポートとして入っていたりする。なので、いろんな子供たちと接する機会が増えていて、いまどきの子供をつぶさに観察することができるところがとても面白い。で、自分の小学生のころと何が同じで、何が違っているのか、そこを考えたりもするのだけれど、子供のころの記憶があまりにも曖昧なので、しっかりと比較することができない。でも、なんとなく、自分のころよりも複雑な子供が増えているような気もする。とても感受性が強くて繊細で、自分の世界を作り上げていて、その中で生きているような子供。そんな子供は昭和にも居たのかもしれないけれど、この情報過多の込み入ったややこしい時代には増えているんじゃないのかな、と云う感覚がしている。

マイク・ミルズ監督の『カモン カモン』に出てくる少年ジェシー(ウディ・ノーマン)はそんな感じの少年だった。二重人格のように別人格を演じてみたり、大人顔負けの本質をつく質問をしてきたり、ハッとするような美しい詩のようなものを云ったりする。父親が精神を病んでいる設定もあってか、遺伝がそうさせているのか? とおもわせるところが常軌を逸する混乱を予想させて、ハラハラ・ドキドキしながら少年ジェシーの行動を見守ることになった。

その少年ジェシーに対するホアキン・フェニックスが演じる伯父のジョニーが素晴らしかった。ひょんなことから妹の子供を預かることになったジョニーは、奇想天外な行動をするジェシーに手を焼きながらも、彼を理解しようと努力し、ときには怒りをぶつけながら、ときには自分の失態に許しを請いながら、次第に彼の心に寄り添うようになって行く。その過程の描き方がこの映画の一番の醍醐味だった。

いまどきの子供たちに接する方法は、昔のように頭ごなしに怒鳴りつけるようなシンプルなものではまったくダメで、その子供の傾向を見極めた上での細やかな対応を見せなければならない。この映画のホアキン・フェニックスは、全米各地で子供たちにインタビューを行っているドキュメンタリー作家であるからこそ、いろいろな子供の思考パターンを経験として得ていた有利性はあったとおもう。でも、普通の親がこれほどの対応を見せられるかと云えば、それは絶対に無理だ。スクールソーシャルワーカーなみの子供の心理についての勉強をする必要性を感じてしまう。いやあ、難しい時代になってきている。子供にとっても、親にとっても。

→マイク・ミルズ→ホアキン・フェニックス→アメリカ/2021→TOHOシネマズ日比谷→★★★★