監督:ギョーム・ブラック
出演:エリック・ナンチュアング、サリフ・シセ、エドゥアール・シュルピス、アスマ・メサウデンヌ、アナ・ブラゴジェビッチ、リュシー・ガロ、マルタン・メニエ、ニコラ・ピエトリ、セシル・フイエ、ジョルダン・レズギ、イリナ・ブラック・ラペルーザ、マリ=アンヌ・ゲラン
原題:A l’abordage
制作:フランス/2020
URL:https://www.minna-vacances.com
場所:ユーロスペース
エリック・ロメール監督の『緑の光線』(1986)は、若いフランス人にとっての夏のバカンスがどれほど重要なものなのかが痛いほどに伝わってくる映画だった。恋人と避暑地で過ごさなければならないと感じる強迫観念が異常に強くて、日本人にとっての夏休みと云うよりもどちらかと云えばクリスマスに近い感覚だった。
ギョーム・ブラック監督の『みんなのヴァカンス』を観て真っ先におもい出したのがその『緑の光線』だった。フランスの避暑地(南フランスのDie)での男と女のエピソードと云うことだけではなくて、俳優に長編映画初出演の学生たちを起用して、即興的に演出しているところもロメールの映画を想起させる部分だった。実際には即興演出ではなくて、
「俳優たちにシーン集(ステップアウトライン)を渡した。セリフは大半が間接話法で書かれている。多くは撮影に入る前、俳優たちの即興の会話を、私が録音してセリフをシーン集の中に書き加えた。だから、実際に撮っている時に即興はほとんどなくて、あらかじめ決めた上で撮影に入っている」
https://hitocinema.mainichi.jp/article/piea8uyf5w
と云うことだった。
ただ、女性目線の『緑の光線』とは違って、ちょっとぬけている感じの男三人組、フェリックス、シェリフ、エドゥアールのバカンス珍道中で、ロメールの映画に出てきそうな「めんどうくさい女」に対抗するクセの強い男たちと云う図式は少しコメディ色が強かった。ギョーム・ブラック監督は笑わせ方もツボを心得ているので、ロメール的で、笑えて、フランスの避暑地を満喫できる楽しい映画だった。
→ギョーム・ブラック→エリック・ナンチュアング→フランス/2020→ユーロスペース→★★★★