監督:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ズラッコ・ブリッチ、イーリス・ベルベン、サニーイー・ベルズ、ヘンリック・ドーシン、キャロライナ・ギリング、ヴィッキ・ベルリン、ハンナ・オルデンブルグ、オリヴァー・フォード・デイヴィーズ、アマンダ・ウォーカー、アーヴィン・カナニアン、ウディ・ハレルソン
原題:Triangle of Sadness
制作:スウェーデン、イギリス、フランス、ドイツ/2022
URL:https://gaga.ne.jp/triangle/
場所:ユナイテッド・シネマ浦和
カンヌ映画祭のパルム・ドールを取った映画はなるべく追いかけるようにしてはいるのだけれど、なぜか2017年のリューベン・オストルンド監督『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は見逃していた。それに気づいて、先日、Amazon Primeで見てみた。これがなんとも不思議な映画で、現代美術館と云うとてもお洒落で洗練された場所にわざと人間の醜さを対比させて、映画を観ている我々を居心地悪くさせるような映画だった。とくに印象的だったのは、美術館でのトークイベントの際に観客の一人が大きな声で卑猥な言葉を連発するシーンだった。隣にいた妻が、すみません病気なんです、と理由付けはされていたのだけど、このシーンが象徴するように上品と下品とをシニカルに同居させているのがこの映画の特徴だった。
そのリューベン・オストルンド監督が新作の『逆転のトライアングル』で2022年のパルム・ドールをまた取った。今回は見逃さずに、と云ってもユナイテッド・シネマ浦和の最終日になってしまったけれど、観に行った。
『逆転のトライアングル』の原題 “Triangle of Sadness” は直訳すると「悲しみのトライアングル」。この「トライアングル」とは眉間のことで、そこにできるシワが「悲しみのトライアングル」なんだだそうだ。眉間にシワを寄せる(眉をひそめる)機会がどんなときに訪れるかと云えば、上品な場所に下品なものが現れるときによくする表情で、それはつまりリューベン・オストルンド監督が『ザ・スクエア 思いやりの聖域』から通じて示しているテーマなような気もしてしまった。この原題がそういったことを意図していたのかはわからないのだけれど、真っ先にそう判断してしまった。
『逆転のトライアングル』ではさらに、持っているものと待たざるもの、エセ資本主義とエセ社会主義、セレブと使用人などの対立軸となるようなものでも、その両方に存在する人間の醜さを同時に露呈させて、観ている我々の眉間にシワを寄せさせる映画になっていた。
でも、そんな高尚なテーマなんかクソ喰らえ、てな感じで、セレブが乗り合わせる豪華客船が嵐にあって、食事中の全員がゲロまみれになるシーンはまさにそのものズバリのストレートに眉間にシワを寄せるシーンになっているのは勇ましかった。この映画に対して眉間にシワを寄せることがあるとするのなら、それはまさにリューベン・オストルンド監督のやりたいことだった。
→リューベン・オストルンド→ハリス・ディキンソン→スウェーデン、イギリス、フランス、ドイツ/2022→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★☆