監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、スコット・スピードマン、ドン・マッケラー、ヴェルケット・ブンゲ
原題:Crimes of the Future
制作:カナダ、ギリシャ/2022
URL:https://cotfmovie.com
場所:MOVIXさいたま

デヴィッド・クローネンバーグの映画と云えば、彼が注目され始めた『スキャナーズ』(1981)『ヴィデオドローム』(1983)や興行的に成功した『ザ・フライ』(1986)のような、アンダーグランドに蠢く得体のしれないものに支配されはじめる世界を描くことが多くて、バイオメカニズム的な、ぐちゃぐちゃっとした、尋常な人ならば生理的に受け付けることがとても難しい訳の分からない物体を登場させて、我々を不安に落とし入れることを得意とするスタイルを持っていた。それはずっと『危険なメソッド』(2011)まで続いていたとおもう。

ところが『コズモポリス』(2012)『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014)と、やたらと洗練された映像の映画を撮るようになってしまって、ああ、クローネンバーグも時代に合わせて変貌してしまったんだなあ、と少し残念に感じていた。

そして、ついに映画も撮らなくなって(撮れなくなって?)、終わりなのかな、とはおもっていた。

そこに突然、8年ぶりに『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』がやって来た。どんなもんだろう? と観てみると、これ、これ! これこそがクローネンバーグの映画だ! とおもわせる、ぐちゃぐちゃ、ぬるぬる、めりめり、の映画が復活していた。やっぱりこれじゃなくっちゃ、と喜ぶと同時に、これはいったい何を意味するんだろうと考えてしまった。内容も、パンデミックを経験した現実世界に呼応するようなストーリーで、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』と同じクローネンバーグの遺書のような引退作品になるんじゃないかと勝手に想像してしまった。

と変な勘ぐりをしていたら、次回作『The Shrouds』が発表されていた。

https://eiga.com/news/20220531/15/

「妻の死に喪失感を抱える革新的な実業家カーシュ(バンサン・カッセル)が、埋葬された死体と繋がることのできるデバイスを開発するというストーリー」だそうだ。まだまだ、クローネンバーグの、ぐちゃぐちゃ、ぬるぬる、めりめり、は続く。

→デヴィッド・クローネンバーグ→ヴィゴ・モーテンセン→カナダ、ギリシャ/2022→MOVIXさいたま→★★★☆