監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス、ブレンダン・フレイザー、タントゥー・カーディナル、ルイス・キャンセルミ、ジェイソン・イズベル、カーラ・ジェイド・メイヤーズ、ジャネー・コリンズ、ジョン・リスゴー、マーティン・スコセッシ
原題:Killers of the Flower Moon
制作:アメリカ/2023
URL:https://kotfm-movie.jp
場所:MOVIXさいたま

先日の「被爆者の声をうけつぐ映画祭」で武蔵大学の学生が「いま花岡事件を考える〜映像・朗読による発表〜」と云う発表を行った。その発表を聞くことはできなかったけれど「花岡事件」って何だろうとWikipediaを見てみた。「花岡事件」とは1945年6月30日に中国から秋田県北秋田郡花岡町(現・大館市)へ強制連行され鹿島組 (現鹿島建設) の花岡出張所に収容されていた 986人の中国人労働者が、過酷な労働や虐待による死者の続出に耐えかね、一斉蜂起、逃亡した事件だった。中国人や朝鮮人が日本へ強制連行されたことは知っていたけれど、終戦間際にそんな事件が起きていたとは、まあ、日本としてはあまり大っぴらにしたくもない事件だろうから、まったく知らなかった。

日本の70年ほど前の事件でさえ知らないのに、アメリカのオクラホマ州オーセージ郡で1920年代に起きたオセージ族の連続殺人事件についてはもちろん知るわけがなかった。マーティン・スコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はその連続殺人事件を追った映画だった。

どんな事件でもその時代を反映しているので興味深いものになるのなのだけれど、そこに自分が持っていた勝手な認識を覆す発見があるとさらに面白いものになる。アメリカの先住民については西部劇のイメージが強いので、白人から住んでいた土地を追われて、最終的には一定の居住地に押し込められてしまったと云う歴史認識だった。でも、この映画ではじめて、自身の土地で発見された石油の利権を裁判で勝ち取ったオセージ族を知った。その利権によって白人よりも豪勢な暮らしをしていたインディアンがいたなんて驚きだった。

この映画の原作はデヴィッド・グランによる「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」。丹念に記録を調べて、膨大な証言をもとに書かれた小説らしい。最終的にオセージ族は、石油の利権を略奪しようとする白人によって悲惨な運命を辿ってしまう。これもひとつのアメリカの黒歴史になるんだとおもう。

スコセッシはその長い小説(日本語訳で528ページ)をうまく3時間26分にまとめていた。あまり頭の良くないアーネスト・バークハートを演じるレオナルド・ディカプリオは素晴らしいし、彼と結婚するオセージ族のモーリー・バークハートを演じるリリー・グラッドストーンも素晴らしかった。グラッドストーンは先住民のブラックフィートとニミプーの血を引いているらしい。

これはデヴィッド・グランの「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」を読まないと。

→マーティン・スコセッシ→レオナルド・ディカプリオ→アメリカ/2023→MOVIXさいたま→★★★★