監督:クリストファー・ノーラン
出演:ジェレミー・セオボルド、アレックス・ハウ、ルーシー・ラッセル、ジョン・ノーラン、ディック・ブラッドセル
原題:Following
制作:イギリス/1999
URL:https://following-2024.com
場所:新宿武蔵野館
クリストファー・ノーランの長編処女作が、おそらくは新作『オッペンハイマー』の公開を機にHDレストア版として公開されたので観に行った。
上映時間69分の中編とも云えるこの映画は、クリストファー・ノーランが好んで使う時間軸の錯綜をすでにこの時点で使用していた。彼が映画を撮り始めた最初から、物語が時間軸通りに進んでいくことを拒否していたことがよくわかる。そのため、次作の『メメント』ではこの習作を経て、すぐさま時系列を逆転させる映画を作ったんじゃないかとおもわれる。そしてその傾向は『TENET テネット』で頂点に達する。
クリストファー・ノーランはどうしてそこまで正方向に進む時間を拒否するんだろう?
その解答を探してネットを彷徨うと、クリストファー・ノーランと糸井重里の対談に目が止まった。
https://www.1101.com/n/s/tenet/2020-09-21.html
これは『TENET テネット』公開時のもので、正方向の時間軸を完全に無視した映画を観て興奮した糸井重里の問いにクリストファー・ノーランが答えるかたちの対談になっていた。そこでクリストファー・ノーランは、
観ている人をちょっと混乱に陥れるというか、
そういう狙いが私の作品にはありますね。
そうすることによって、
いつも新しい何かを提供したい。
観ている人を混乱に陥れる方法は、例えばヒッチコックの『サイコ』のようなミステリーやサスペンス映画にはたくさんある。でもクリストファー・ノーランはストーリーのプロットで観客を混乱に陥れると云うよりは、映画を作るときの慣習と云えば良いのか、ルールと云えば良いのか、誰もが正方向に進んでいると考える時間軸を突然前後させたり、まるっきり逆方向にしたりと、時間をいじることによって混乱に陥れようとしている。どうしてそこに注目するのか、その理由がわかるインタビュー記事は見当たらない。
『オッペンハイマー』での時間軸を前後させる方法は、観ているものを混乱させはするものの、オッペンハイマーの苦悩を表現させる方法としてはとても有効だったような気もする。でも『TENET テネット』で時間をリアルタイムに逆転させたのはやりすぎだったような気もする。
自分としては『インセプション』くらいの混乱が一番心地よかった。いろいろクセがあって一筋縄では行かないクリストファー・ノーランだけれど、次はどんな映画を撮るんだろう? の楽しみがあるのは確かなんだよなあ。
→クリストファー・ノーラン→ジェレミー・セオボルド→イギリス/1999→新宿武蔵野館→★★★☆