監督:イーサン・コーエン
出演:マーガレット・クアリー、ジェラルディン・ヴィスワナサン、ビーニー・フェルドスタイン、コールマン・ドミンゴ、ペドロ・パスカル、ビル・キャンプ、マイリー・サイラス、マット・デイモン
原題:Drive-Away Dolls
制作:アメリカ/2024
URL:https://www.universalpictures.jp/micro/drive-away-dolls
場所:ユナイテッド・シネマ ウニクス南古谷
1940年代から50年代のイギリスで、マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーと云うコンビを組む映画監督がいた。代表作は『天国への階段』(1946)『赤い靴』(1948)『ホフマン物語』(1951)などで、どの映画もメルヘンと怪奇的なものがほど良く混在した面白い映画ばかりだった。その後、二人がコンビを解消したあと、マイケル・パウエルは単独で『血を吸うカメラ』(1960)と云うとても暴力的な映画を撮った。そんなことから、今までのコンビの映画で見られた怪奇的な描写はマイケル・パウエルの好みによるものじゃないのか、と和田誠は山田宏一との対談(「たかが映画じゃないか」文藝春秋)で言及していた。
それを読んで、コンビで映画を撮ったときにそれぞれの趣味がしっかりと映画に反映されるものなんだ、とおもったものだった。となると、コーエン兄弟はどうなんだろう?
今回、コーエン兄弟がそれぞれはじめて単独で、ジョエルが『マクベス』(2021)を、イーサンが今回『ドライブアウェイ・ドールズ』(2024)を撮った。だから、この2つを見比べれば、ふたりの好みがわかるんじゃないかと考えた。
ジョエル・コーエンの『マクベス』は、とことん真面目にシェークスピアを映画化していて、今までのコンビの映画に見える文学作品への傾倒は、ああ、ジョエル・コーエンの趣味なのか、と見ることができた。一方、イーサン・コーエンの『ドライブアウェイ・ドールズ』はヘンリー・ジェイムズを引き合いには出すものの、映画としてはとてもエキセントリックなレズビアン二人のロードムービーで、小道具としてディルドが重要だったりと、ああ、なるほど、今までのコンビの映画に見える悪ふざけな部分はイーサン・コーエンの趣味だったのね、と見ることができてしまった。
たった2つの映画で彼らの嗜好を判断するのは拙速かもしれないけれど、それぞれ単独で作った映画が一つの方向にあまりにも振れすぎているので、二人で作った映画のほうがほどよく良いバランスになっているような気がしてしまった。今後はどうするんだろう? バラバラで撮って行くのかなあ。
→イーサン・コーエン→マーガレット・クアリー→アメリカ/2024→ユナイテッド・シネマ ウニクス南古谷→★★★☆