監督:ホン・サンス
出演:クォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ、チョ・ユニ、パク・ミソ、シン・ソクホ
原題:탑/Walk Up
制作:韓国/2022
URL:https://mimosafilms.com/hongsangsoo/
場所:シネマ・カリテ新宿
『WALK UP』はホン・サンスの『小説家の映画』に続いての2022年の映画。でも、もうすでに『水の中で』(2023、第24回東京フィルメックスで公開)『우리의 하루(私たちの一日)』(2023)『여행자의 필요(旅行者のニーズ)』(2024)と3本も撮っている。はたして、この多作家の映画を今後も日本で公開し続けられるんだろうか?
『WALK UP』を観はじめて、あれ? 今までのホン・サンスの映画とはちょっと違うな、と云う印象が次第に強くなって行った。どこに違和感を感じるんだろうかと考えてみると、いくつかのパートに分かれているエピソードがすべて独立していて、登場人物が共通しているにもかかわらずストーリーは繋がっていなかった。今までのホン・サンスの映画でも、いくつかのエピソードが時系列に並ばないで前後に錯綜させていることはよくあった。そこに若干の齟齬が見受けられても、ここまでストーリーが繋がっていなかったことは無かったような気がする。
この映画の舞台となるのはあるアパート。1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエで、それぞれの階でのエピソードが展開して行く。その階と階とを結ぶ階段がらせん状になっているので、アパートのオーナーであるヘオク(イ・ヘヨン)が登り降りすることによって他の世界へとスリップすることを意味していたんだろうとおもう。
このようなマルチバースでストーリーが進行することに違和感を覚えたとしても、ホン・サンスの映画のキモは会話劇にあるので、その面白さはまったく変わらなかった。ますます映画監督役のクォン・ヘヒョにホン・サンス自身を投影させている気がする。
次の映画は『水の中で』だけれど、全編をピンボケで撮っていると云われる実験的な映画の日本での本公開はあるんだろうか?
→ホン・サンス→クォン・ヘヒョ→韓国/2022→シネマ・カリテ新宿→★★★★