監督:グレッグ・バーランティ
出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン、レイ・ロマーノ、ジム・ラッシュ、アンナ・ガルシア、ドナルド・エリース・ワトキンズ、ノア・ロビンズ、コリン・ウッデル、クリスチャン・ズーバー、ニック・ディレンバーグ、コリン・ジョスト
原題:Fly Me to the Moon
制作:アメリカ/2024
URL:https://www.flymetothemoon.jp
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

フィリップ・カウフマン監督がトム・ウルフの原作をもとに撮った『ライトスタッフ』(1983)は、実在の戦闘機パイロット、チャック・イェーガーが音速の壁に挑戦し続ける姿を軸として、そこから有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」に参加する7人の宇宙飛行士(最初の7人)へと受け継がれて行く「ライトスタッフ(正しい資質)」を描いていた。その最初の7人(マーキュリー・セブン、オリジナル・セブン)とは、アラン・シェパード、ガス・グリソム、ジョン・グレン、スコット・カーペンター、ウォーリー・シラー、ゴードン・クーパー、ディーク・スレイトンで、この中でただ一人、ディーク・スレイトンだけは心臓の動きに心房細動が見つかり宇宙に飛ぶことは出来なかった。

グレッグ・バーランティ監督の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』に出てくるNASAの発射責任者コール・デイヴィス(チャニング・テイタム)は、元戦闘機パイロットで宇宙飛行士を目指していたが心房細動が見つかったために断念。NASAの発射責任者として担当したアポロ1号では発射予行演習の際に発生した火災により、ガス・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィー の3人を亡くしてしまう。と云う経歴は、そのままぴったりでは無いけれどもディーク・スレイトンを重ね合わせていた。

もう一人の主人公であるケリー・ジョーンズ(スカーレット・ヨハンソン)はPRマーケティングのプロで、人々の関心が泥沼化したベトナム戦争へと向いて、やたらとお金のかかるアポロ計画に疑問を持ち始めた風潮のなかで、アポロ計画のイメージアップをはかるために雇われる人物だった。こちらのモデルは、アポロ11号の月面着陸船「イーグル」にテレビカメラを搭載することを主張した広報専門家のジュリアン・シェア(https://en.wikipedia.org/wiki/Julian_Scheer)だそうだ。

そして、その世界各国に生中継された月面着陸の映像はフェイク映像だったのではないか、と云う昔からある疑惑もストーリーに入れて、アポロ11号にまつわる様々なコンテンツを盛り込んだ映画がこの『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』だった。

アポロ計画の映画を観ると、どうしてもそのベースにフィリップ・カウフマンの『ライトスタッフ』を見てしまう。つまり「ライトスタッフ(正しい資質)」とはなんだろう? に行き着いてしまう。今回の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』もコール・デイヴィス(チャニング・テイタム)に最初の7人のディーク・スレイトンを感じるので、そしてアポロ1号で犠牲となってしまう最初の7人のガス・グリソムへの追悼も見えるので、彼のパートでは「ライトスタッフ(正しい資質)」を見ることができた。でも、ケリー・ジョーンズ(スカーレット・ヨハンソン)のパートはだいぶコメディへ寄っているので、そこまで「ライトスタッフ(正しい資質)」を求めずに、最後にはケリー・ジョーンズにもその資質が備わっていることがわかるのだけれど、ゆるりと笑いながら見る映画にはなっていた。

とは云え、もうちょっと巧くまとめられたんじゃなかったのかなあ、のおもいは強い。それに“Fly me to the moon”の曲はフランク・シナトラのバージョンじゃなきゃダメだよね。

→グレッグ・バーランティ→スカーレット・ヨハンソン→アメリカ/2024→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★☆