監督:押山清高
声:河合優実、吉田美月喜
制作:「ルックバック」製作委員会/2024
URL:https://lookback-anime.com
場所:MOVIXさいたま

「チェンソーマン」の藤本タツキが「少年ジャンプ+」に載せた全143ページからなる長編読み切りを押山清高がアニメ化。小学4年生の藤野と不登校の京本の女子二人が、切磋琢磨して一緒に漫画を描いて行く人生が描かれる。

コンビで漫画を書く人と云えば誰だって真っ先に藤子不二雄をあげるとおもう。その藤子不二雄の自伝的漫画が1977年から1982年に「週刊少年キング」で連載された「まんが道」で、当時、一番マイナーな漫画誌の「週刊少年キング」を毎週買って楽しみに読んでいた。

「まんが道」が面白かったのは、主人公の満賀道雄と才野茂がいろいろな成功、失敗を繰り返しながら漫画家として大成して行く過程が面白いこともさることながら、一緒にストーリーを考えて、手分けして絵を書いていく合作と云う作業がとても興味深かったのもその一因だった。二人して好きなことに打ち込み、徹夜で締切りを間に合わせたあとの達成感は、二人分以上の大きな清々しさを感じることができてしまった。

あれから、あんまりコミックを読まなくなってしまったのだけれど、ふとして見たTVアニメの「バクマン。」に目が止まってしまった。これも二人の少年がコンビを組んで漫画家を目指していくストーリーで、コミックを後から買って読むほどにすっかりはまってしまった。そこに「まんが道」と同様に、共同作業が見せる「1+1=2」以上の高揚感を見てしまった。

こんな流れから『ルックバック』も、そりゃツボにはまらないわけは無かった。映画好きからすれば、過去の映画の名シーンを彷彿とさせるカットをさりげなく入れてくるのも良かった。藤野が無理やり京本の手を引きながら走って振り返るシーンはとても映画的で、この構図は原作にもあるんだろうか? あるとしたら、藤本タツキはだいぶいろいろな映画を見ている。

「まんが道」の満賀道雄と才野茂は絶えず映画館に足を運んでいた。それはおそらく手塚治虫の名言「君たち、漫画から漫画の勉強をするのはやめなさい。一流の映画をみろ、一流の音楽を聞け、一流の芝居を見ろ、一流の本を読め。そして、それから自分の世界を作れ。」から来ていたとおもう。藤本タツキ原作の『ルックバック』はそこに繋がった。

→押山清高→(声)河合優実→「ルックバック」製作委員会/2024→MOVIXさいたま→★★★★