監督:リチャード・リンクレイター
出演:グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ、サンジャイ・ラオ、モリー・バーナード、エバン・ホルツマン、グラレン・ブライアント・バンクス
原題:Hit Man
制作:アメリカ/2023
URL:https://hit-man-movie.jp
場所:MOVIXさいたま

リチャード・リンクレイターのフィルモグラフィーを見ると様々なタイプの映画が並んでいる。イーサン・ホークとジュリー・デルピーが演じる男女の関係を、二人が実際に歳を取って行くままに撮り続けた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)『ビフォア・サンセット』(2004)『ビフォア・ミッドナイト』(2013)の3部作や、ジャック・ブラックのアクの強い演技が笑える『スクール・オブ・ロック』(2003)、クリスチャン・マッケイが演じる若き日のオーソン・ウェルズが素晴らしい『僕と彼女とオーソン・ウェルズ』(2008)などなど、リチャード・リンクレイターはなんでも撮れる職人監督のイメージだ。いや、製作や脚本までもするので職人の域を超えている。

そのリチャード・リンクレイターの新作『ヒットマン』も、まさに職人技と云えるようなシチュエーション・コメディだった。グレン・パウエルが演じていてる「ニセモノの殺し屋」が、過去の映画などで描かれてきたタフな殺し屋像を演じているうちに、内に引きこもる陰キャラを次第に開放して行くストーリーは観ていて楽しかった。と同時に、大人になってからも人の性格は変えられるよ、のメッセージは、笑いながらも痛烈に刺さるものだった。

主人公のグレン・パウエルが演じるゲイリー・ジョンソンは、講師として働きながら、警察のおとり捜査に協力してプロの殺し屋を演じた実在の人物だった。その人物をリチャード・リンクレイターと一緒にグレン・パウエル自らも脚本に参加してふくらませて作り上げたのがこの映画の主人公だった。リチャード・リンクレイターは俳優を脚本に参加させることがある。たしかに、演じやすいように現場でホンを書き換える必要があるのなら、まあ、いろいろと脚本家組合などの事情があるのだろうけれど、出演俳優を脚本に参加させるのは効率の良い方法なのかもしれない。

実際に人を殺すハメになってしまう主人公がハッピーエンドになるオチはちょっとひっかかるものがあるのだけれど、リチャード・リンクレイターの映画はいつも楽しむことができる。

→リチャード・リンクレイター→グレン・パウエル→アメリカ/2023 →MOVIXさいたま→★★★☆