監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファー、ヨルゴス・ステファナコス
原題:Kinds of Kindness
制作:アメリカ、イギリス、アイルランド/2024
URL:https://www.searchlightpictures.jp/movies/kindsofkindness
場所:イオンシネマ大宮

ヨルゴス・ランティモスの新作がもうやって来た。前作の『哀れなるものたち』とキャストがダブるので、並行して撮っていたんじゃないかとおもえるほどの矢継ぎ早の公開だった。

今回の『憐れみの3章』は邦題が示す通り、3つの短編からなるオムニバス映画。すべてをヨルゴス・ランティモスが撮っているので「オムニバス」とは云わないのかなあ。「アンソロジー」映画かな。

第1話は「R.M.F. の死」と云うタイトルが付いていて、上司から絶対的に支配されている男のはなし。男は上司から「R.M.F. 」と云う名の男を交通事故に見せかけて殺すことを命令されるが、どうしても殺人は出来ないと拒否してしまう。そのために上司からすべてを取り上げられた男は、なんとか信頼を取ろ戻そうと格闘する。

第2話は「R.M.F. は飛ぶ」。海難事故から奇跡的に助かった妻を向かい入れる警官のはなし。昔の妻とはどうしても別人に見えてしまう警官は、妻に無理難題を押し付ける。

第3話は「R.M.F. サンドイッチを食べる」。カルト指導者から依頼されて、死者を蘇らす能力を持つ特別な人物を懸命に探す女。その最中に、元夫から睡眠薬を飲まされて無理やり関係を持たされてしまう。体が汚れてしまった女は指導者から追放されて…。

どれもヘンテコなストーリーで、ヨルゴス・ランティモスらしいけれど、いつもよりは肉欲、食欲、支配欲などの人間のグロテスクさが抑え気味で、そこはヨルゴス・ランティモスらしからぬ、とてもクールな映画だった。だからこそ一般の人へも向けられた映画ではあるのだけれど、土曜日のシネコン、お昼の12時の回で、私を含めて観客は二人だけだった。

ところで、それぞれのストーリーのタイトルに出てくる「R.M.F.」って何? 第1話では交通事故に見せかけて殺される男のことなので「R.M.F. の死」はそのとおりだ。でも第2話では、ただ単に海難事故の女性を救うヘリコプターのパイロットの名前だった。「R.M.F. は飛ぶ」は、まあ、そのとおりなんだけど、タイトルにしてはまったく意味がない。第3話にいたっては、ただの死体だ。つまり「サンドイッチを食べる」ことさえしない。とおもっていたら、忘れてましたと云わんばかりに最後「R.M.F.」がサンドイッチを食べるシーンが付け加わった。

3つのストーリーはすべて「R.M.F.」でつながっている。「R.M.F.」を演じているのはヨルゴス・ステファナコス。最初「R.M.F.」はヨルゴス・ランティモス自身が演じているのかとおもってしまった。それぐらいに、どことなく似ている。だから「R.M.F.」には監督からのメッセージが込められているんじゃないのか、「R」「M」「F」には意味があって、それぞれが原題の「Kinds of Kindness(優しさの種類)」を表しているのではないか、と見てしまった。

ネットを探して見ると「R」は「Redemption(償還)」「M」は「Manipulation(操作)」「F」は「Faith(信仰)」じゃないか、と云っている人がいた。なるほど、とはおもうけれど、そこは監督に聞いてみないとわからない。

→ヨルゴス・ランティモス→ジェシー・プレモンス→アメリカ、イギリス、アイルランド/2024 →イオンシネマ大宮→★★★☆