監督:ジェームズ・グレイ
出演:マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナー、エレーナ・ソロヴェイ、ダグマーラ・ドミンスク、マヤ・ワンパブスキー、アンジェラ・サラフィアン、イリア・ヴォロック、アントニ・コローネ、ディラン・ハーティガン、ディーディー・ルキシー
原題:The Immigrant
制作:アメリカ/2013
URL:http://ewa.gaga.ne.jp
場所:新宿武蔵野館
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』は、単純な愛情表現だけで成り立つ人間のドラマとは一線を画していて、人と人とのあいだに生まれる直接的な感情と、それと一緒に付随する、あやふやで、あいまいで、はっきりとしない感情のゆらぎをとても丁寧に映像化させていた。その微妙な機微を演技する俳優たち中で、教祖のフィリップ・シーモア・ホフマンに心酔する男を演じていたのがホアキン・フェニックスだった。狂気や才気、従順や奔放などがないまぜになった複雑な人物を見事に演じていて、とても強烈な印象を残した。特に以下のシーンなどは、その後にフィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなったこともあって、今見ても泣ける。
『エヴァの告白』に登場したホアキン・フェニックスは、まるで『ザ・マスター』の人物の延長線上にも見えた。思いやりがありながらも非情で、策士でありながらもずさんなところを見せる複雑な男の悲哀が『ザ・マスター』のホアキン・フェニックスが演じるフレディ・クエルに通じているようにおもえたのだ。「愛」と「憎」だけでは割り切ることのできないマリオン・コティヤールとの関係も、フィリップ・シーモア・ホフマンとホアキン・フェニックスの関係と同じだった。
おそらく、妹と一緒に船でエリス島を後にするマリオン・コティヤールをスクリーンの左側に、二人を送った後にエリス島の中をさまようホアキン・フェニックスをスクリーンの右側に捉えたシーンは、今年度の映画の中で最高のラストシーンじゃないかとおもう。
→ジェームズ・グレイ→マリオン・コティヤール→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★★