
監督:ティム・フェールバウム
出演:ピーター・サースガード、ジョン・マガロ、ベン・チャップリン、レオニー・ベネシュ、ジヌディーヌ・スアレム、ジョージナ・リッチ、コーリイ・ジョンソン、マーカス・ラザフォード、ベンジャミン・ウォーカー、ジム・マッケイ(当時のテレビ番組司会者)
原題:September 5
制作:ドイツ、アメリカ/2024
URL:https://september5movie.jp
場所:ユナイテッド・シネマ浦和
1972年に開催されたミュンヘンオリンピックについては、日本の男子バレーや体操団体、競泳の田口信教や青木まゆみが金メダルを獲ったことをよく覚えている。でも同時にテロ事件が発生してイスラエルの選手やコーチ、審判員が11人も殺されたことはまったく覚えていない。覚えていないと云うか、小学生だったので何が起きたのか理解できなかったのかもしれない。
そのミュンヘンオリンピック開催中の1972年9月5日に起きたパレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の選手村襲撃事件を、オリンピック中継を担当していたアメリカABCテレビのスポーツ担当クルーがその主導権を報道局に渡さずに、自分たちで生中継を行うことになった一連の経緯を描いた映画がティム・フェールバウム監督の『セプテンバー5』だった。
実際に起きた事件をドキュメンタリー・タッチで描く映画が面白いのは、誰もが知っている結末に進んでいく時系列の過程で、そのような結末に至らないとおもわされるような出来事が起きているのに、細かな事象の積み重ねで結局は誰もが知っている結末に帰結してしまう背景をつぶさに見ることができることだからだとおもう。あとから検証された事実も的確に映像化されて、当時のテレビ映像も交えてテンポよく見せられると、とてもノリ良く映画を観ることができてしまう。
同時に報道よりは下に見られているスポーツ番組のクルーの矜持なども描かれていて、今までスポーツ中継しか撮ったことのなかった人間たちが大きな事件を全世界に責任を持って報道しなければならない重圧もこの映画の緊迫感を盛り上げていた。
脚本は監督のティム・フェールバウムの他にモーリッツ・ビンダーとアレックス・デヴィッド。素晴らしい脚本だった。
→ティム・フェールバウム→ピーター・サースガード→ドイツ、アメリカ/2024→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★★