
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、初音映莉子、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー
原題:A Complete Unknown
制作:アメリカ/2024
URL:https://www.searchlightpictures.jp/movies/acompleteunknown
場所:ユナイテッド・シネマ浦和
リアルタイムで聴いたわけでは無いんだけれど、たとえばビートルズとか、それより前のジャズ系の女性ヴォーカリストとか、あとからその良さを知ってCDを買い漁ったミュージシャンはたくさんいる。でも、その中にボブ・ディランはいなかった。なぜか、ボブ・ディランの曲にビビビッと電流が走ることはなかった。
時は流れて2005年。マーティン・スコセッシのドキュメンタリー映画『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』を見て、遅ればせながらボブ・ディランの良さをやっと認識した。それは歳を重ねて趣味が変わった所為なのか、スコセッシの映画がよく出来ていたからなのか、そのどっちもあったような気がする。と同時に、ジョーン・バエズの弾き語りのカッコよさにも圧倒された。
そのボブ・ディランをティモシー・シャラメが演じて、ジョーン・バエズをモニカ・バルバロが演じた映画がジェームズ・マンゴールド監督の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』だった。ボブ・ディランがウディ・ガスリーとピート・シーガーに認められてデビューし、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで多くの人に不快感を与えながらも強行したエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスの模様までを描いている。
アーチストと呼ばれる人たちは、過去には無い新しいものを創作することに意義を見出す人たちなのに、それが時代にマッチして大衆の人気を得たと同時に新しさが薄れ、と同時に大衆に迎合せざるを得ない状況に追い込まれるジレンマが必ず起きる。ボブ・ディランはそのような板挟みをまったく意に介さず、静かに、淡々と色々なものを吸収しながら新しさを求め続けた姿勢がかっこよかった。それをティモシー・シャラメが自然に演じていたのが凄かった。アカデミー賞主演男優賞を獲ってもおかしくなかった。
振り返ると日本のフォークって、どれだけボブ・ディランに感化されていたことか。それがやっと、遅すぎたけれど、わかった。そう云えば、ボブ・ディランの名前をはじめて知ったのは、今でもレコードを買いに行ったことをありありとおもい出せるガロの「学生街の喫茶店」だった。知らず知らずに誰もがボブ・ディランの影響を受けている。
→ジェームズ・マンゴールド→ティモシー・シャラメ→アメリカ/2024→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★★