監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:マシュー・マコノヒー、ジェニファー・ガーナー、ジャレッド・レト、スティーヴ・ザーン、ダラス・ロバーツ、マイケル・オニール、デニス・オヘア、グリフィン・ダン
原題:Dallas Buyers Club
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.finefilms.co.jp/dallas/
場所:新宿シネマカリテ
映画館での予告編を観たかぎりでは、エイズになってしまったマシュー・マコノヒーが余命30日を宣告されながらも残りの人生を謳歌させて死ぬ、のようなイメージしか受け取れなかったのだけれど、まあ、ある意味、それはそうなんだろうけど、この映画の大切な要素としての「医者の処方するいい加減な薬」と云う部分がまったく抜け落ちていた。病院から渡される薬に何の疑いもなく全幅の信頼を寄せることに常日ごろから疑問を感じているので、マシュー・マコノヒーがその事に対して真っ向から対決する部分は見ていて楽しかった。結局のところ、経済性ばかりを優先させた今の時代では、病院やFDA(アメリカ食品医薬品局)も経済的な利潤を追い求める仕組みの中で動かざるを得なくて、患者の治癒なんてものは二の次になるのはあたりまえなわけで、その薬を疑いもなくほいほい飲んでしまうのは危険このうえないことをこの映画は見せてくれる。
医者が処方する薬のでたらめさに加えて、何年もかかる新薬の認可制度も問題視する。もうすでに死のうとしている人に対して有効とおもわれる薬に対する臨床試験の用意周到さはまったく患者の気持ちを度外視している。不治の病になった時点で大きなリスクを負ってしまっているわけだから、それに対抗するにはリスク以外に何もないのに、リスクを冒すのは危険すぎると云うのはいったい何なんだろう。もうすでに危険なんだ!
自分の医者嫌い、薬嫌いを決定させたのは、もしかするとミロシュ・フォアマンの『カッコーの巣の上で』を見たあたりなのかもしれない、と気付いた。この映画を見てますますそれが増長してしまう。映画は、商業映画もドキュメンタリー映画も、それが真実かどうかは見極めが難しいけれど不正を衝く映画が多いので、嫌いなものがどんどん増えてしまう。
→ジャン=マルク・ヴァレ→マシュー・マコノヒー→アメリカ/2013→新宿シネマカリテ→★★★☆