監督:中島哲也
出演:役所広司、小松菜奈、清水尋也、妻夫木聡、オダギリジョー、高杉真宙、二階堂ふみ、橋本愛、森川葵、黒沢あすか、青木崇高、國村隼、星野仁、康芳夫、中谷美紀
制作:「渇き。」製作委員会(ギャガ、リクリ、GyaO!)/2014
URL:http://kawaki.gaga.ne.jp
場所:T・ジョイ大泉
中島哲也の『嫌われ松子の一生』を観終わった後の後味の悪さは怒りを覚えるくらいだった。コテコテに盛った絵作りも鼻につくし、ミュージック・クリップのような前後の繋ぎを無視したモンタージュも大嫌いだった。ところが何となくもう一度見てみようと云う気が起きて、WOWOWだったかNHKBSだったか、で見たら、これがおもいのほか楽しめてしまった。おそらく中島哲也の過剰な絵作りはテレビの画面にぴったりと合っていたのかもしれない。
となると、『パコと魔法の絵本』(この映画はちょっと中途半端な……、)を挟んでその次の映画となる『告白』を映画館で観たらどんな感想を持つんだろうと楽しみになった。後味の悪さはおそらく『嫌われ松子の一生』と一緒で、やはり中島哲也特有の過剰なスタイルで攻めてくるとおもわれる映画を果たして面白く感じるんだろうかと映画館に足を運んでみたら、これが、めちゃくちゃに良かった。驚いたことに、後味の悪さを楽しむようになっていた。いつのまにか中島哲也のスタイルを受け入れる身体になっていたのだ。
今回の『渇き。』もやっていることは今までの映画とまったく同じだった。過剰に装飾されたイメージカットを細かく繋いで音楽と一緒に見せるだけの映画。ストーリーはあるけど、そんなものよりもイメージ重視の映画。純粋に映画として評価を下すのならば、おそらくダメな映画の部類に属するのだろうけど、でもこれがそんなに悪くない。面白い。映画なんて何でもありだから面白ければすべてが許される。
ただ、惜しかったのは、最後まで小松菜奈が演じている「藤島加奈子」と云う人物に焦点が合わないまま映画が終わってしまったことだった。「加奈子」の心の底に沈殿する感情の冷たさが映像として浮かび上がって来て、観ている我々が身震いするようなショットがワンシーンでもあれば良かったのに。
→中島哲也→役所広司→「渇き。」製作委員会(ギャガ、リクリ、GyaO!)/2014→T・ジョイ大泉→★★★★