監督:今井友樹
出演:今井友樹、今井照夫
制作:工房ギャレット/2014
URL:http://www.torinomichi.com
場所:飯田橋しごとセンター
民族映像文化研究所の関係で以前から知っている今井友樹さんの初監督作品『鳥の道を越えて』は、岐阜の東濃地方を中心に関東から関西にかけて行われていた「カスミ網」猟についてのドキュメンタリー作品だった。「カスミ網」猟とは、渡り鳥の通り道(「鳥の道」)に「カスミ網」を掛けて鳥を捕獲する猟のことで、古くは江戸時代の文献にその猟が行われていた記録が残っているそうだ。中部地方の貧しい山間部の人たちにとって鳥を食べることは、たんぱく質源を確保するための欠かせない猟だった。
今井監督の出身が岐阜県東白川村であることから、祖父から「カスミ網」のことやその網を張る猟場「トヤ」のことを小さい頃に聞かされていたことがこのドキュメンタリーを撮るきっかけとなったらしい。その今井さんの祖父には見える、山の稜線にある「鳥の道」を求めてこの映画は進んで行く。
「カスミ網」猟は、すでに戦後にGHQ主導によって禁止されてしまっているので、今ではその猟を見ることはできない。なので、渡り鳥の生態を研究するため、鳥に足輪を付けるために「カスミ網」を使って鳥を捕獲している福井県にある山階鳥類研究所の調査所の映像が紹介される。その映像によって、実際に鳥が「カスミ網」にかかるしくみがよくわかる。
この猟の一番のポイントは、鳥をおびき寄せるための囮の鳥がいることだった。今では鳴き声の録音をスピーカーで流すだけだけど、昔は実際の鳥を使用していたらしい。それも単純に捕まえた鳥を鳴かせれば良いわけではなくて、1年をかけて鳥を調教して、猟の時季に他の鳥をおびき寄せるための鳴き声を出すように訓練するらしい。それがうまく行けば、鳥によってはその一声でたくさんの鳥が集まって来て、入れ食い状態で捕獲することが可能になるらしい。
初監督作品らしく、とても律義に構成してあるので、この「カスミ網」猟のことがしっかりとわかるような映画になっている。今井さんナレーションと同じように、最初は見えなかった「鳥の道」が映画の最後には見えるようになって行くのが嬉しかった。
今回の上映が終わった後の監督との質疑応答で、しゃべっている人の方言が聞き取りにくくて何を云っているのかさっぱりわからなかった、との不満があった。うーん、そうかなあ。まったくそうはおもえなかった。もちろん聞き取りにくいところはあったけど、前後の文脈のニュアンスで補える程度なんじゃないのかなあ。テレビの影響で、何でもかんでもテロップを入れてはっきりさせる傾向があるけど、そういうのは大嫌い。もちろんドキュメンタリーなんだから、見ている人にしっかりと伝える努力は必要だけど、なんでもかんでも、子供から老人まですべての人にわかるような至れり尽くせりの映画って、おそらくとてつもなくつまらない映画だ。
→今井友樹→今井友樹→工房ギャレット/2014→飯田橋しごとセンター→★★★☆