毛皮のヴィーナス

監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック
原題:La Vénus à la fourrure
制作:フランス/2013
URL:http://kegawa-venus.com
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

ポランスキーの新作は二人芝居だった。『死と処女』が三人芝居、『おとなのけんか』では四人芝居だったのがついに二人に。次は一人だ!

二人芝居と云えば原作も戯曲なわけで、その映画化も限りなく演劇的なんだけれども、自分にとってはそんな閉鎖空間がとても気持ち良くて、そこで繰り広げられる“虚”と“実”の目まぐるしい展開にフラフラとなるほどに酔いしれてしまう。演出家と女優、男と女、サドとマゾなどの位置関係が、主と従、そのままの関係性であったり、時には逆転したり、そのもの自体が逆転してしまったりと、いったい自分はいま何を見ているのかがわからなくなるほどに、何をより所にこの映画を見ればいいのかがわからなくなるほどに混乱してしまう。でも、その混乱はとても心地良いのだ。心地の良い混乱なんて映画でしか味わえない。

映画をしばらく見て行くうちに、マチュー・アマルリックが若かりしころのポランスキーに見えてくる。『吸血鬼』のころの。とすれば、この映画はポランスキーの波乱万丈の人生についても語っているんじゃないかともおもえてくる。脳内ポランスキーだ。だとすれば、現在の妻でもあるエマニュエル・セニエが昔の妻のシャロン・テートに見えてくる。もちろんシャロン・テートのほうがめちゃくちゃ美人だけれど。『吸血鬼』の撮影の時、ポランスキーはシャロン・テートをこの映画のようにオーデションをしたんだろうか。

映画を見終わってから、いろいろとシャロン・テートのことを調べてみると、『ライアンの娘』などで有名なクリストファー・ジョーンズの2007年のインタビューに行き当たった。

Mail Online「The final affair of Roman Polanski’s murdered wife Sharon Tate」 by LINA DAS

このインタビューによると、クリストファー・ジョーンズはポランスキーの子供を身ごもっているシャロン・テートと不倫していたらしい。そしてシャロン・テートは、ちょうどポランスキーが『ローズマリーの赤ちゃん』の撮影に入っている所為か、自分の死を予感するとともに「The Devil is beautiful. Most people think he’s ugly, but he’s not.」なんてことを云っている。

ポランスキーとテート

シャロン・テートがどのような女優だったかあまりイメージがなかったけど、その奇麗なイメージとは裏腹に、心の内には倒錯した世界が広がっていたんじゃないかともおもえてしまう。この映画がポランスキーとシャロン・テートとの関係性をもあわせて語っているのではないかとうがった見方を勝手にするとさらに面白い。

→ロマン・ポランスキー→エマニュエル・セニエ→フランス/2013→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★★