千年の一滴 だし しょうゆ

監督:柴田昌平
出演:藤本ユリ、三浦利勝さん一家、今給黎秀作、坪川民主、椎葉クニ子、澤井久晃、大野考俊、助野彰彦、福知太郎、加藤宏幸、伏木亨、北本勝ひこ、木村多江(「だし」ナレーション)、奥貫 薫(「しょうゆ」ナレーション)
制作:プロダクション・エイシア、NHK、Point du Jour、ARTE France./2014
URL:http://www.asia-documentary.com/dashi_shoyu/movie.html
場所:ポレポレ東中野

柴田昌平監督の新作はフランスとの合作の「だし」と「しょうゆ」のドキュメンタリー。

この映画は、第一章は「だし」、第二章は「しょうゆ」と二つのパートに分かれていて、最初はどちらかと云うと日本食の味のベースとなる「だし」のほうに興味津々で、この映画のことを「だしの映画」と省略して呼んでいたくらいだった。でも実際に観てみると、「だし」については昆布やカツオや椎茸からきめ細やかに抽出される「うま味」についての描写が中心で、「しょうゆ」のほうのミクロコスモスの世界へ入り込んで行く広がりにはかなわなかった。

「しょうゆ」「みりん」「さけ」はカビがつくる。そのカビは日本人が長きにわたって改良し、育ててきた「麹(こうじ)菌=アスペルギルス・オリゼ」で、日本にしか存在しない。

第二章の最初にこのフレーズを聞いて、すっかり「麹(こうじ)菌=アスペルギルス・オリゼ」への興味がこの映画の中心となってしまった。さらに、この菌を800年の長きにわたって飼い慣らしてきた「種麹屋(たねこうじや)」と云う存在が紹介される。それはとても小さな工房ばかりで、全国でわずかに10軒ほどしかない。パスツールがアルコール発酵が酵母による作用であることを発見する遥か以前にそのしくみを理解し、目に見えないナノの世界と向き合ってきた種麹屋は世界最古のバイオ・ビジネスとも云えるらしい。このような種麹屋の存在を日本人の誰が知っていただろう? 自分のまったく知らない世界が存在し、人知れずとてつもないことをやってのけている人たちのことを紹介してくれるドキュメンタリーほど面白く感じることはない。

日本の凄さは、クールジャパンなんて云われて派手にもてはやされているものだけではなくて、なかなか表に出てこない人たちの中にいっぱい詰まっている。

→柴田昌平→加藤宏幸→プロダクション・エイシア、NHK、Point du Jour、ARTE France./2014→ポレポレ東中野→★★★★