バベルの学校

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
出演:ブリジット・セルヴォニ、Abir (Tunisie)、Agneszka (Pologne)、Alassane (Mali)、Andrea (Croatie)、Andromeda (Roumanie)、Daniel (Roumanie)、Daniil (Biélorussie)、Djenabou (Guinée)、Eduardo (Brésil)、Felipe (Chili)、Kessa (Angleterre)、Luca (Irlande du Nord)、Marko (Serbie)、Mihajlo (Serbie)、Maryam (Libye)、Miguel (Venezuela)、Naminata (États-Unis, Côte d’Ivoire)、Netmal (Sri Lanka)、Oksana (Ukraine)、Ramatoulaye (Mauritanie)、Thathsarani (Sri Lanka)、Yong (Chine)、Youssef (Maroc)、Xin (Chine)
原題:La cour de Babel
制作:フランス/2013
URL:http://unitedpeople.jp/babel/
場所:新宿武蔵野館

ローラン・カンテ監督の『パリ20区、僕たちのクラス』は、演技経験のない本物の中学生を使った半分ドキュメンタリーのような映画だった。シナリオ通りに演技をしている劇映画ではあるけれども、実際に使っているだろうとおもわれる言葉遣いがとてもリアルで、手持ちカメラも手伝ってまるでドキュメンタリーを見ているようだった。

で、その『パリ20区、僕たちのクラス』で一番驚いたのは、クラスの中にいろいろな人種がいると云うことだった。移民の多いフランスと云う国から想像すればあたりまえのことだろうけど、劇映画とは云え実際のクラスを模している実態を見ると、おお、すげえ、になる。人種も宗教も違う子供たちが一堂に会して、それぞれの文化に則した価値観がぶつかり合う様は、ダイナミックなアクション映画を見ているような気分にさせられた。

その『パリ20区、僕たちのクラス』の完全ドキュメンタリー版とも云えるジュリー・ベルトゥチェリ監督の『バベルの学校』は、フランスに移住してきたばかりの子供たちがフランス語と基礎的な学力を学ぶ中学校の「適応クラス」を描いたドキュメンタリーだった。

クラスの中で一番目立つのはアフリカから移住してきた黒人の女生徒で、物事をズバズバとはっきり云う。感情の起伏も激しい。だから必ず衝突が起こって、いつもケンカが絶えない。東欧から来た女の子たちは、一見すると穏やかな表情だけれども、内面に秘めている情熱が高いことを感じさせる。中国の女の子はおとなしくて精神的にも脆そう。でも、最後のほうで男の子たちとじゃれあっている姿を見てほっとしたり。南米の男の子たちは、日本で云うところの草食系っぽい。

このような多種多様な子供たちを一つの教室で学ばせるからこそ、いろいろな文化や人間の多様性が学べるわけで、それをくっきりと区別して管理してしまったらつまらない人間しか育たないのじゃないのかなあ。

と、最近の曾野綾子の産経新聞でのコラムを読んでそんな感想が。

もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった。
(産経新聞 2015/02/11付 7面)

→ジュリー・ベルトゥチェリ→ブリジット・セルヴォニ→フランス/2013→新宿武蔵野館→★★★☆