山形国際ドキュメンタリー映画祭の2日目はすべてをワン・ビンの『死霊魂』に捧げます。
●王兵(ワン・ビン)『死霊魂』(フランス、スイス/2018/495分)
1950年代後半に起きた中国共産党の反右派闘争で粛清されて、甘粛省酒泉市の夾辺溝(ジアビアンゴウ)にある再教育収容所へ送られた人々の8時間にもおよぶ証言集。ワン・ビン監督が2007年に撮った『鳳鳴(フォンミン) 中国の記憶』も同じく反右派闘争に巻き込まれた和鳳鳴(ホー・フォンミン)の3時間にもおよぶ証言集だったが、それをさらに証言者数を増やして完全版にしたような映画だった。だから映画の長さも8時間の長尺になって、それを飽きずに最後まで観ることができるのか多少の不安はあったのだけれど、『鳳鳴 中国の記憶』の時と同じく『死霊魂』もその長さをまったく感じさせずに食い入るように観ることができてしまった。それも絶えず自分がその立場になったら何ができるのだろうかと云う観点から見ることができるので、証言する人が涙すれば一緒に泣けるし、楽天的な態度を取ろうとすれば、これは運命であると割り切ることも出来るし、人の言葉による映画なのに一喜一憂できる構成はワン・ビンならではだった。すごい映画だとおもう。
12日は台風19号の影響で、映画を観始めた午前10時の段階では小雨まじりの曇り模様だったけど、映画が終わった夜の8時に山形市中央公民館ホールから外に出ると土砂降りだった。山形で『死霊魂』を観た記憶が、同時に台風19号も一緒にシンクロして残るのは、深く心に刻み込まれると云うところにおいては良かったような。