シュガー・ラッシュ:オンライン(2D日本語吹き替え版)

監督:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン
声:山寺宏一、諸星すみれ、花輪英司、田村聖子、菜々緒、浅野まゆみ
原題:Ralph Breaks the Internet
制作:アメリカ/2018
URL:https://www.disney.co.jp/movie/sugarrush-ol.html
場所:109シネマズ菖蒲

前作の『シュガー・ラッシュ』(2012年)を観ての感想は、最近の3Dアニメーション映画と同様に、ゴチャゴチャした映画! でしかなかったけれど、今回の『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、アーケードゲームの世界のヴァネロペとラルフたちがインターネットの世界へと侵入して悪戦苦闘するエピソードを軸にきっちりと作られていた。『アナと雪の女王』のアナとエルサや、シンデレラ、白雪姫らのディズニーのキャラクターたちも多数カメオ的に出演していて、そこへ前作同様に日本のゲームのキャラクターたち、「ストリートファイター」シリーズの春麗やザンギエフ、ソニック、パックマンたちも出てきて、ゲームの世界とアニメの世界のキャラクターたちがコラボしたような盛りだくさんのワクワクする映画になっていた。

ゲームの世界のキャラクターが活躍する3Dアニメーション映画ってもっと作られても良いとおもうんだけど、それが少ないのはなぜなんだろう? ゼルダの映画とか観たいのに。

→リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン→(声)山寺宏一→アメリカ/2018→109シネマズ菖蒲→★★★☆

監督:ハイファ・アル=マンスール
出演:エル・ファニング、ダグラス・ブース、ベル・パウリー、ベン・ハーディ、メイジー・ウィリアムズ、スティーヴン・ディレイン
原題:Mary Shelley
制作:アイルランド、ルクセンブルグ、アメリカ/2017
URL:https://gaga.ne.jp/maryshelley/
場所:シネマカリテ

今年最初の映画は『少女は自転車にのって』を撮ったサウジアラビアの女性監督ハイファ・アル=マンスールの『メアリーの総て』。

メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」は青空文庫に宍戸儀一訳が公開されていて、

https://www.aozora.gr.jp/cards/001176/card44904.html

登録されたときにすぐさま読もうと考えていたのに、まったくの手付かずのままだった。『メアリーの総て』が公開されたことをきっかけとして、今年には絶対に読もうと新年のはじめに決意をあらたに。

『メアリーの総て』でメアリー・シェリーを演じたエル・ファニングは、最近の『20センチュリー・ウーマン』と『パーティで女の子に話しかけるには』で自分にとってのNo.1女優になりつつあって、この『メアリーの総て』もめちゃくちゃ期待はしていたのだけれど、小説を書く女性にしては文系オタク臭が少し足りなかった気がしないでもない。実際のメアリー・シェリーの肖像画を見ても、メリル・ストリープやティルダ・スウィントンに似た神経質で繊細な感じが見て取れて、エル・ファニングの少女的なかわいらしさとはまったくかけ離れているような気がしてしまった。

映画の構成も、メアリー・シェリーが「フランケンシュタイン」を書くきっかけとなるのが夫のパーシー・シェリー やバイロンとの関係にあることはもちろんわかるのだけれど、スイスにあるバイロンの屋敷のシーンがくどくどと長くて、それでいて「フランケンシュタイン」を出版化する部分があまりにもハイスピードで短いのはバランス的にも偏っているような気が、、、「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」が出版化される部分にもっと重きを置いている映画かと勝手に思い込んでいたのでちょっとがっかり。

→ハイファ・アル=マンスール→エル・ファニング→アイルランド、ルクセンブルグ、アメリカ/2017→シネマカリテ→★★★

今年、映画館で観た映画は、なら国際映画祭で観た短編映画10作品も含めて全部で75本。
その中で良かった映画は10本に絞ると以下の通り。

苦い銭
勝手にふるえてろ
スリー・ビルボード
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
ファントム・スレッド
レディ・バード
告白小説、その結末
カメラを止めるな!
判決、ふたつの希望

以上、観た順。

今年は『カメラを止めるな!』に尽きるのかもしれないけれど、なら国際映画祭に行ったこともあって、これだけ様々な国の映画を観た年は無かったとおもう。特に『判決、ふたつの希望』や『運命は踊る』など中東の映画の台頭には驚いた。

アリー/ スター誕生

監督:ブラッドリー・クーパー
出演:レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー、サム・エリオット、アンドリュー・ダイス・クレイ、デイヴ・シャペル
原題:A Star Is Born
制作:アメリカ/2018
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/starisborn/
場所:109シネマズ木場

『スタア(スター)誕生』のストーリーは、ジュディ・ガーランド版、バーブラ・ストライサンド版と観てきて、どんな展開になるのか知っているわけだけれども、このレディー・ガガ版も新鮮な気持ちで観ることができたのにはびっくりした。レディー・ガガは演技できるの? おお!あんがい出来るんじゃん、なんてところの興味が映画への集中力を増していたのかもしれない。

ブラッドリー・クーパーの演出は、ハリウッドのスタイルにただ取り込まれただけのあまり面白味のないものだった。ブラッドリー・クーパーの演技同様に、もっと過剰さが加わっていても良かったんじゃないのかなあ。でも『スタア(スター)誕生』のストーリーは、その時代、その時代のマネー・メイキング・スター(と云うか歌姫?)を迎えて、これからも作り続けられて行くのも悪くはないのかもしれない。

1954年に公開された『スタア誕生』でのジュディ・ガーランドの名台詞、「私はノーマン・メインの妻です」を引き継いで、今回も「私はジャクソン・メインの妻です」と云ってくれるのではないかと一瞬おもったけれど、それはなかった。

→ブラッドリー・クーパー→レディー・ガガ→アメリカ/2018 →109シネマズ木場→★★★☆

アメリカン・バレエ・シアターの世界

監督:フレデリック・ワイズマン
出演:アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のダンサーたち
原題:Ballet
制作:アメリカ/1995
URL:
場所:アテネ・フランセ文化センター

いつだったか、ふとテレビで見たコンテンポラリー・バレエに衝撃を受けた。目も止まらぬ素早い動きのダンサーの躍動感に目を奪われてしまった。カナダのラララ・ヒューマンステップスと云うダンスカンパニーだった。すぐさまAmazonでDVDも買ってしまった。

自分にとってのバレエの接点はそんなもので、おそらく普通のクラシック・バレエは退屈するんだろうなあ、と云う懸念はぴったりと当たってしまった。いくらフレデリック・ワイズマンの映画でもバレエのシーンではちょっとウトウトと。でも、そのクラシック・バレエの練習風景はコンテンポラリー・バレエのダイナミズムを感じてとても面白かった。それは最近のフレデリック・ワイズマンの映画『パリ・オペラ座のすべて』や『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』に通じて行く。

→フレデリック・ワイズマン→アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のダンサーたち→アメリカ/1995→アテネ・フランセ文化センター→★★★

監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ、ウィル・オールドハム、ソニア・アセヴェド、ロブ・ザブレッキー、リズ・フランケ
原題:A Ghost Story
制作:アメリカ/2017
URL:http://www.ags-movie.jp
場所:シネマカリテ

映画のタイトルだけを見れば軽いホラー系の映画にも見えるけど、実際には不慮の事故で死んでしまった男の現世への強烈な執着を描いた映画だった。

「ゴースト」となった男が連れ立っていた妻を忘れられずに、ずっとその場所にとどまって妻を見守って行くストーリーではないかと誰もが最初は想像するのだけれど、未亡人となった妻に新しい男が出来てからはなぜかその住んでいた「家」に執着して、未来に向かって永遠ともおもわれる時間そこに居続けるストーリーとなって行くところがとても不思議な映画だった。あとから考えれば、住んでいた「家」への執着に関する夫婦の会話があったことがその伏線で、日本でも幽霊は「人」に憑くことよりも「家」に憑くことのほうが多いんじゃないかと、最近読んだ小野不由美の「営繕かるかや怪異譚」からもおもいあたる部分だった。

ただ、その行為が未来永劫に続くのではなくて、途中から時空をさかのぼって、アメリカの開拓史の時代からその土地の歴史をなぞって行くところがさらに不思議さを増していた。そして、夫婦がその「家」に住んでいたときに聞いたラップ現象が実は「ゴースト」となった男が立てた音だったことがわかる部分をどのように解釈すればいいのか難しかった。自分の生きているこの瞬間にも、先々に死んだ自分の魂の影響が及んでいることの意味を脚本も書いたデビッド・ロウリーに聞いてみたい気がする。

→デヴィッド・ロウリー→ケイシー・アフレック→アメリカ/2017→シネマカリテ→★★★

監督:フレデリック・ワイズマン
出演:アラバマ聾盲学校(AIDB)内のヘレン・ケラー校の人びと
原題:Multi-Handicapped
制作:アメリカ/1986
URL:
場所:アテネ・フランセ文化センター

フレデリック・ワイズマンのカメラは、障害者施設の子どもたちに対してもしっかりと視線を送っていた。日本でもこのような施設での取り組み方をブラックボックス化しないで、もっと公にしらしめる活動をするべきなんじゃないかと、この映画を観ながらずっと考えていた。どんなにアピールしてたとしても、津久井やまゆり園の事件の犯人のような考えを持っている人間に対しては何の効力も発揮しないのかもしれないけれど、でも、少なくとも、多様性の大切さが叫ばれる今の世の中に対して、彼らもその一つの要素として認識してもらう必要はあるんじゃないかと、重度の障害を持つ人や特別支援施設に多少なりとも関わっている人間としては考えざるを得なかった。

フレデリック・ワイズマンの映画は、いつの時代に観ても、その時々の問題にぴたりと寄り添ってくる汎用性がある。スゴイことだ。

→フレデリック・ワイズマン→アラバマ聾盲学校(AIDB)内のヘレン・ケラー校の人びと→アメリカ/1986→アテネ・フランセ文化センター→★★★☆

監督:ブライアン・シンガー
出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョゼフ・マゼロ、エイダン・ギレン、トム・ホランダー、アレン・リーチ、マイク・マイヤーズ
原題:Bohemian Rhapsody
制作:イギリス、アメリカ/2018
URL:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/
場所:109シネマズ木場

アメリカやUKのロックを聴くには聴くけど、曲名やバンドのメンバー名をしっかりと覚えていない自分にとっても、クィーンだけは「Killer Queen」や「We Are the Champions」や「Bicycle」などの曲名も覚えているし、フレディ・マーキュリーはもちろんのことブライアン・メイやロジャー・テイラーと(ジョン・ディーコンだけは覚えてなかった、ごめん)メンバーの名前も知っている稀有なバンドだった。でも、もちろんのこと、彼らの出自については何も知らなかった。だからイギリス人であるとおもっていたフレディ・マーキュリーがインド系であることにまずは驚いたし、あんなに出っ歯だったことにも衝撃を受けてしまった。クィーンのファンからはそんな初歩的なことも知らねえのかよ、と云われそうだけど、だからこそ、ブライアン・シンガーの撮った『ボヘミアン・ラプソディ』は最初から、ああそうだったのか、とか、そういう経緯だったのね、とか、無知だからこそやたらとグイグイと引き込まれる映画だった。

ヒット曲にめぐまれたバンドにとっての宿命でもある中心メンバーのソロ活動による内部亀裂などお決まりの展開がありながらも、それでもライブシーンのVFXを使ったカメラワークなどに斬新さがあって、そしてラミ・マレックが演じているフレディ・マーキュリーの歌声を担当したマーク・マーテルのそっくりさ!(正確にはフレディとマーク・マーテルとラミ・マレックが歌ったもののミックスらしい)もあって、クィーンのファンでなくても充分に楽しめる音楽映画になっていた。特にウェンブリー・スタジアムで行われたライヴエイドに出演したクィーンを俯瞰からなめるカメラワークがすごかった! VFXがある今の時代はイメージさえあれば何でも実現できる。

→ブライアン・シンガー→ラミ・マレック→イギリス、アメリカ/2018→109シネマズ木場→★★★★

監督:パノス・コスマトス
出演:ニコラス・ケイジ、アンドレア・ライズボロー、ライナス・ローチ、ネッド・デネヒー、オルウェン・フエレ、リチャード・ブレイク、ビル・デューク
原題:Mandy
制作:ベルギー/2017
URL:http://www.finefilms.co.jp/mandy/
場所:シネマカリテ

「映画秘宝」方面から『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』がスゴイ! との情報が流れてきて、「映画秘宝」方面の人たちが推す映画を全面的には好きにはなれないんだけど、なんとなくこの映画には食指が動いて、相変わらず何の情報も入れずに観に行ってしまった。

オープニングに流れるクレジットのフォントからして何やら80年代の匂いが漂ってきて、そこに流れる音楽(故ヨハン・ヨハンソン!)もプログレッシブ・ロックのようで、なにやらF・ポール・ウィルソンのホラー小説を原作としたマイケル・マン監督の1983年の映画『ザ・キープ』をおもい出さずにはいられなかった。カルト集団が善良な市民を襲う内容も70年代、80年代の映画のようで、さらに『悪魔のいけにえ』や『ヘル・レイザー』を彷彿とさせるキャラクターたちも、今の2018年の映画ではなくてひとむかし前の映画のようだった。

最近のゆる〜い映画からするとズシンと精神に直撃する映画なので、観ていて、ある意味、わくわくする映画なんだけれども、その情け容赦のない内容に気分は落ち込み、観終わってからはヘトヘトに疲れてしまった。このような映画の評価はむずかしくて、誰もが許容できる内容ではないので、簡単に人には勧めることはできない。まあ「映画秘宝」お墨付きの映画である時点でそれはわかることなんだけれども。

監督がパノス・コスマトスと聞いて、コスマトス? えっ、じゃあ、ジョルジュ・パン・コスマトスの息子? とおもったら、そうだった。

→パノス・コスマトス→ニコラス・ケイジ→ベルギー/2017→シネマカリテ→★★★☆

監督:フレデリック・ワイズマン
出演:ニューヨークのモデルエージェンシー「Zoli」に所属するモデルたち
原題:Model
制作:アメリカ/1980
URL:
場所:アテネ・フランセ文化センター

1980年ごろのニューヨークのモデル業界にカメラを向けたこの映画を観て、なにが一番おもしろかったのかと云えば、女性モデルのファッションや髪型や化粧がまるでそのまま80年代音楽のMTVに登場してくるようなイメージで、この映画の中でCM撮影を行っているモデルの人たちも、もしかしたらデュラン・デュランなどのミュージック・クリップに出ていたんじゃないのかなあ、と見えるところだった。それだけでも懐かしくて、そして今よりもどこか脳天気な時代をうらやましくも感じてしまった。ドキュメンタリーは、時代の断片を切り取って記録しているとろが素晴らしい。フレデリック・ワイズマンの映画がなければ、誰も80年代のモデル業界を振り返りもしないとおもう。

デジタル技術が進んで、なんでも修正ができる今現在のモデル業界って、80年代と比べて何が違うんだろう? フレデリック・ワイズマンの『モデル2』が観たいような気がする。

→フレデリック・ワイズマン→ニューヨークのモデルエージェンシー「Zoli」に所属するモデルたち→アメリカ/1980 →アテネ・フランセ文化センター→★★★☆